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実録ブラック企業(先物取引研修編第一話)

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今回の主な登場人物

五島・・後に無理矢理東北訛りを覚えさせられる。嫌なやつだがちょっとだけ気の毒。

中沢・・・つかみどころのない変わり者。口癖は「ほんとにぃー!?」。私と仲がいい。

川田・・・口癖は「アタマおかしいんじゃねえのおめえ!」と「訛れよ五島」
うるさいし理不尽。

地獄の合宿を終えた私たちは、先物取引の営業をする上で必要になる外務員登録試験を受ける事になる。

合宿編はこちら、続きで見ると登場人物が分かりやすい!

先物取引合宿編「上」

先物取引合宿編「中」

先物取引合宿編「下」

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研修

テキストを一通りやっておけば合格できるようなテストと言われ研修を受けることになった。

研修してくれるのは相田さんという、初老の男だ。

川田に比べれば大して怒りもしないし変なクセもない。

それもそのはず。

このオジさんは営業ではなく、総務の人だったのだ。

相田、恐るるに足らず。

たしか試験を受ける約1ヶ月のうち約2週間ほど座学ばかりの研修で、ほぼ定時に帰れてとても楽だった記憶がある。

「なんだ、キツいのは合宿だけか!」そう思わせるには十分な期間だった。

考えれみればこれもアメとムチのアメみたいなもんだ。

人間は楽な期間を挟まれる事で辞め時が分からなくなってしまうのだ。

私は寮に住んでいたので、仕事が終わると毎日同じ寮に住む中沢や熊田、山崎の部屋に行って遊んだり飲みに行ったりしていた。

ちなみにこの期間には誰一人辞めなかった。

私たちは全員もれなくブラック列車に乗車したようだ。

この試験までの間、五島は何故か石田に対して何の脈絡もなく、

「絶対に俺には勝てないよお前ごときでは!」

などと意味不明な挑発行為を繰り返して石田をイラつかせていた。

おそらく同期全員が「なんだこいつ?」と思っただろう。

とにかくこの2週間はとても楽で五島以外の同期との仲も一気に深くなった大事な期間でもある。

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イベント

この手の会社はせっかくの休みにイベントをやりたがる。

親交を深めよう!とか言ってね。

あえて言おう、うるせえ!と。

研修中で楽だったから良かったもののヒドく疲れるイベントだった。

バーベキュー

週に一度しかない大切な日曜日をブラックバーベキューに潰された。

絶対に許さない。

葛西臨海公園でバーベキューをした。

私たちは準備には関わらず、手ぶらで電車に乗って行くだけだった。

「バーベキューくらいは普通にやれるんだ!」そう思った。

しかし始まってみれば先輩たち含め私たちもごちゃごちゃ川田に言われていた。

「チゲえよバカ!皮から焼くんだよ!!頭おかしいんじゃねえのか!?」

「飲みが足りねえんじゃねえのかおめえ!?」

「気合いが足りねえな!注魂しろよ!」
※注魂とは魂を注ぐかの如く全力で自分の決意を叫ぶ事である。

「おい熊田ー、彼氏とちゃんとヤッテんのかあ?」

「おい古山!長崎行ってちゃんぽん買ってこい!」

「おめえハゲてんな萩原!」

パワハラ、アルハラ、パワハラ、セクハラ、パワハラ、ハゲハラ。

「わあっ、すげえや!ハラスメント地獄!最低だぁー!」

うん、全然楽しくないよね。

バーベキューってこんなにつまらなく出来るんだなと思った。

終わって現地解散になったが中沢が観覧車に乗ってみたいと言い始めたのでみんな仕方ないので付き合う事に。

野郎のクセに観覧車を見つけると何故かすぐ乗りたがる中沢とは私は今までに三回観覧車に乗っている。

彼女かてめえは。

ソフトボール大会

週に一度しかない大切な日曜日をソフトボール大会に潰された。

絶対に許さない。

「俺野球とか上手いから!」と張り切っていた五島だったが、全然上手くなかった。

なんなら下手寄りだった。

その自信はどこからくるのか、そしてどこへ向かっているのか?方向はあっているのか?

もしも人生空振り三振世界選手権があったらこの男は間違いなくトップランカーになれるだろう実力だ。

それにしてもこのソフトボール大会、はっきり言ってクソつまらない。

ただ汚い汗をかいただけだ。

なんで私はこんな事してるんだろうと不思議に思った。

ちなみにカメラマン担当の相田さんはこの大会で可愛い秘書を盗撮していたのが後でバレたそうで会社をクビになっていた。

御愁傷様ですねえ、エロじじい。

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初めての電話営業

2週間の研修後、残りの2週間は試験勉強をすると同時に配属された後にも必要な電話営業の練習をする事になった。

担当は賀久部長という太って眼鏡をかけた目が笑ってないおじさんと、小野という眼鏡をかけたインテリヤクザみたいな風貌の30歳くらいの男だった。

小野さんが話すのを見本にみんなとりあえずカンペを見ながら電話の練習との事だった。

小野さんは独特の喋りと気持ちの入った手振り身振りでアポを取っていた。

基本、家への電話が多かったので奥様と話すことが多かったのだが、小野さんは少し話が出来るような人がいると夕御飯は何かを聞いていた。

小野「奥様くらいになるとお夕食はビーフストロガノフですか?私作れるんで今から手伝いに行きます!」

そう言ってこちらから電話を切り住所録を持って出ていってしまうのだ。

(なんだこれ、笑っていいのか分からないな)

きっとみんなもそう思っただろう。

と言うかこの人がお手本か!
いくら何でも強引すぎるだろ!

小野さんが早々に出ていってしまったので、賀久の監視の元、何だか怪しい電話番号がついてる住所録リストと受話器を片手に電話をかけまくった。

やはり会社名を言うだけで怪しがられる。

まず知らない会社から電話がきた時点で

私「もしもしー、私株式会社ごはんですぞのウホスと申しますがー」

見込み客「はいー・・・えっと何の会社ですかー?」

私「資産運用のお手伝いを・・・」

見込みのない客「ガチャっ!ツーツー・・・」

普通に考えればこんなのは当たり前の事なんだが少しだけショックだった。

これを延々と繰り返してアポを取るという地道な作業だ。

しかし何十件かけてもアポどころか話すら聞く人がほぼいない。

あまりにも成果が出なくてモチベーションがあがらないのを見かねた賀久がカンペの半分くらいのとこまで話を聞いてもらえたらポイントをくれる事になった。

1週間ごとにポイントを競って上位2名は巨人戦を見に行けるという褒美があった。

会社で東京ドームの年間シートを買っているとの事だった。

その週は私と中沢が上位2名になった。

電話は焦ると切られる。

これは電話営業では当たり前だが意外と切られまいと焦ってしまうものだ。

「聞かないんならどうぞお切りください」

くらいの穏やかな気持ちで電話すると意外と聞いてくれる率が上がる。

あとは元も子も無いけど声と運も必要である。

怪しそうな声のやつは誰もが怪しく感じるものである。

可哀想な五島だ。

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東京ドーム

そういう事で中沢と二人で東京ドームに行った。

中沢は野球見に来るのが初めてだったようで興奮気味だった。

中沢「ビールの売り子ってみんな可愛いな!俺あの子から買いたいんだけど!ちょっと行ってくるわ!」

わざわざかなり遠くにいる売り子のところまで自分から行って買うのである。

私「中沢待てっ!俺も行く!」

私は楽しそうな事には乗る主義なのだ。

野球自体は二人ともあまり興味がな買ったので途中で出て飲みに行く事にした。

ここで察しのいい読者ならもうお気づきだと思うが東京ドームから出ると観覧車が見える。

中沢に見せないように行きは喋りまくって気をそらしていたが帰りに見つかってしまった。

不覚である。

中沢「おい!あれ見ろよあれ!観覧車じゃん!」

私「ああ・・・」

中沢「乗ろうぜ!」

私「ええっお前と二人で?気持ち悪い!」

中沢「いいじゃーん!東京の夜景が見れるぜ!」

私「(こいつ乗るまで絶対帰らない)分かったよ!奢れよ!」

中沢「ほんとにぃー!?やったー!いーよー!」

そしてうるさい中沢を無視しつつ東京の夜景を見て

「明日も電話営業かあ、めんどくせえなあ」

と思う私だった。

続く

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